投信も保険も、のオカジマですが、表題のような件にも当たることがあります。
それは秋口の頃の話です。
私が担当したお客様は明らかに農作業に従事しているであろうという感じの、素朴な田舎のおばさん(失礼)でした。
何の手続かは知らないがすぐ終わるのかな、と思いきや、全然違いました。
「実は・・・・」と持ち込まれたのは、家庭裁判所の検認を受けた自筆遺言証書だったのです。
内容はあっさりしたものです。
ゆいごんしょ(注:被相続人はひらがなで記入していた)
私△△子(被相続人)は▼▼保険の半分を妹の●●子に上げるものとします
平成○○年○月○○日 ※※ △△子 印 (注:※※は姓)
これだけです。
え??これだけ???
市販の便せんには本当にこれだけしか書かれてませんでした。
家庭裁判所の検認を受けているので当方が閲覧しても問題はありません。
以下、家庭の事情を推測すると。
被相続人は東京に暮らしていましたが病状が悪化し、実家のある東北地方のある街に転居して実の妹夫婦(遺言書にある●●子)と同居していました。
被相続人には配偶者がおりましたが被相続人に先んじて亡くなり、子は東京都内の市営住宅に住む娘が一人。
実の娘が母の面倒を見ていない、あるいは見ることが出来ない環境にあり、これは想像ですが、この妹に姉は医療費など金銭的な面で多大な迷惑をかけたものと思われます。
そして「ゆいごんしょ」として残したのが先述の内容の通り。
さあ、困りました。
公正遺言証書や遺産分割協議書ありの相続手続は扱ったことありますが、自筆遺言証書の取扱は実は今回が初めてだからです。
私はとりあえずこのお客さまには「ひとまず持参した書類はコピーして返却する、手続の可否について即答はいたしかねるので●●保険の△△センターに照会する。それまで手続は待ってほしい」と話し、一旦お帰りいただきました。
いや、最近多いんですよね、この「自筆遺言証書」という奴が。
本音を言うと、遺産分割協議書もそうですが、司法書士も弁護士も通さない自作の自筆遺言証書は勘弁して欲しい。
絶対にどこかに瑕疵があるのです。
過去には遺産分割協議書ですが、自作のそれにも瑕疵があり、結局相続人(というかお金が欲しい人)にカネが払えない!!という騒ぎになりました。
私には幸いなことにそれはうちの上司の担当でしたが、瑕疵がある時に備えて内容には必ず「特約」を添えたいですね、こう云う場合は。
この件は私が照会文書を作成し、センターを通じて本社照会になり回答まで1ヶ月ほどかかりました。
そして、この「ゆいごんしょ」も瑕疵がありました。
瑕疵だらけだって言う??
結果、「2分の1を支払う」ことは出来ましたが、その瑕疵とは何でしょう。
答え:遺言執行者が指定されていない。
確かに文面には被相続人の意思が書かれてはありますが、それを実行する者を誰でもいいので指定せねばならないのです。
実行したい当の本人、すなわち被相続人はもうこの世にはいないですからね。
この遺言書にはそれが欠けていました。
さあてどうする。
支払う方法としては2つあります。
1・遺言執行者を選任してもらい、その者に手続してもらう。
いま一つは
2・相続人にお金を支払う手続をする。
被相続人には実子が一人おります。
配偶者はすでに死去。
相続人の順位としては配偶者、子ですからね。
兄弟姉妹はその後、祖父母や孫よりも順位が後なので。
※保険会社によって取扱が異なるとは思いますが。
相続人に支払ってもいいのであれば、2の方法でしょうね。
被相続人△△子の妹の●●子ですが、法テラスにも相談していたようでしたので
「この遺言書には誰がその手続(2分の1を上げる為に保険の解約が必要)をするかの指定がない。誰でもいい。遺言執行者には多分●●子さんもなれるだろうから、その辺は法テラスに相談してみてはどうだろう」と促し、必要書類の説明もしてお帰りいただきました。
そして、3週間後、●●子は再び来店。
無事遺言執行者として選任されたようです。
遺言執行者の選任審判書謄本も持参しました。
理由は省きますが、遺言による保険の解約還付金は銀行振込にはなりませんでしたが一旦現金で支払う形にし、無事、保険の解約は終了。
姪にあたる被相続人の娘さんにも送金が完了。
これでまたひとつスキルが上がったオカジマなのでした。
しかし、これまでの部長だったら言うでしょう。
「そんなことが出来ても仕方ない、●●取れ、●●を」
・・・・・多くは語りません。